毎朝鏡の前に立ち、シェービングフォームを塗り、カミソリを滑らせる。この行為が、僕の日常におけるささやかでありながら、確実なストレス源だった。肌が弱いせいか、どれだけ丁寧に剃ってもカミソリ負けは避けられず、顎の周りは常にうっすらと赤みを帯びていた。さらに悩ましかったのが、夕方になると姿を現す青ヒゲだ。きちんと剃ったはずなのに、皮膚の下で黒々と透けて見えるヒゲは、自分でも不潔な印象に感じられ、人と対面で話すときに自信が持てない原因にもなっていた。時間も手間もかかり、肌を傷つけ、コンプレックスを助長する。ヒゲ剃りとは、僕にとって百害あって一利なしの行為だった。そんな日々を終わらせたい一心で、僕はヒゲの医療脱毛を決意した。最初は半信半疑だった。本当に毎日の手間から解放されるのだろうか。高額な費用を払って後悔しないだろうか。そして何より、あの痛みに耐えられるのだろうか。不安を抱えながらクリニックのカウンセリングに訪れた日を今でも覚えている。しかし、医師からの丁寧な説明は、僕の不安を少しずつ解消してくれた。脱毛の仕組み、リスク、そして得られるであろう未来。その全てが論理的で、エステとは違う医療としての説得力があった。そして迎えた初回の施術。正直に言って、想像を絶する痛みだった。特に鼻の下や顎は、まるで太い輪ゴムで連続して弾かれ続けるような衝撃で、自然と涙が滲んだ。しかし、看護師さんの励ましと巧みな冷却のおかげで、なんとか乗り切ることができた。施術後数日は赤みが続いたが、一週間もすると驚くべき変化が訪れた。ヒゲが、まるで力なく抜け落ちるかのように、ぽろぽろと脱落し始めたのだ。回数を重ねるごとに、その効果は明らかだった。ヒゲの生えるスピードが遅くなり、密度も減っていった。五回目を終える頃には、朝のヒゲ剃りが週に一度で済むようになり、あれほど悩んでいた青ヒゲもほとんど目立たなくなった。そして今、コースを終えた僕の顔に、かつての悩みは見る影もない。毎朝の時間に余裕が生まれ、肌荒れもなくなった。何より、自分の顔に自信が持てるようになったことが最大の収穫だ。ヒゲ脱毛は、単にムダ毛をなくすだけでなく、僕の人生の質そのものを向上させてくれた最高の自己投資だったと確信している。