手軽に美しくなれるイメージから、アートメイクをエステサロンのメニューの一つと誤解している人が未だに少なくありません。しかし、これは非常に危険な認識です。日本の法律において、アートメイクは紛れもない「医療行為」と定められています。この重い事実を理解することは、自らの安全を守り、深刻なトラブルを避けるために不可欠な知識です。なぜアートメイクが医療行為なのでしょうか。その理由は、施術のプロセスにあります。アートメイクは、針を用いて皮膚に色素を注入する行為です。つまり、皮膚のバリア機能を破り、体内に異物を入れることになります。この行為は、出血や感染症のリスクを伴うため、医学的な知識と衛生管理、そして万が一の合併症に対応できる能力が絶対的に必要とされます。そのため、医師法第17条に基づき、アートメイクの施術は医師、または医師の指示のもとで看護師などの医療資格を持つ者しか行うことが許されていません。エステティシャンなどの無資格者がアートメイクを行うことは、明確な医師法違反であり、刑事罰の対象となります。では、無資格のサロンで施術を受けると、具体的にどのようなリスクがあるのでしょうか。最も恐ろしいのが、感染症のリスクです。B型肝炎、C型肝炎、HIV(エイズウイルス)といった血液を介して感染する病気は、針の使い回しや、不衛生な器具の使用によって引き起こされる可能性があります。これらの病気は、人生を大きく左右する深刻なものです。医療機関では、針や色素の容器、手袋などを患者ごとに完全に使い捨てるなど、厳格な衛生管理基準が設けられていますが、違法サロンではコスト削減のためにこれらが遵守されていないケースが後を絶ちません。また、アレルギー反応のリスクも無視できません。アートメイクに使用される色素に対して、アレルギーを持つ人がいます。医療機関では、事前にパッチテストを行ったり、アレルギー反応が起きた際に迅速な医療処置を行ったりすることが可能ですが、違法サロンではそのような対応は期待できません。さらに、デザインの失敗や、修正不可能な結果に終わるリスクも高まります。無資格者は、顔の解剖学的な知識や、皮膚科学に関する知識が乏しいため、左右非対称になったり、似合わないデザインになったりする可能性が高まります。
アートメイクが医療行為であるという重い事実